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Alternative facts(代替的な事実)とは

2017.3.27

カテゴリ:Social 著者:三谷 恭平

代表のNY出張にかぶせて、海の向こうの時事ネタです)

ここ日本でも、その一挙手一投足・発言がひょっとしたら自国の首相以上に注目度の高い米国大統領。

先日メディアに政権発足時の大統領就任式の聴衆の少なさを指摘されたことについて、大統領報道官が反論し「大統領就任式の聴衆は史上最大」と記者会見で発言しました。このため聴衆の数について「大統領陣営 vs メディア」の論争が起こっていますが、実際の参加者数に関しては陣営の旗色が悪そうだ、というのが現状のようです。

虚偽ではなく「代替的な事実」

そこで登場したのが、大統領誕生の影の立役者とも言われている戦略家で大統領側近のKさん。
インタビューで「なぜ大統領は報道官に嘘を言わせたのか」と尋ねられ、「虚偽ではない。必要に迫られて伝えた代替的な事実だった」と答えました。

インタヴュワーは「代替的な事実とは、事実ではなく虚偽だ」と切り捨てましたが、このKさんが使った「代替的な事実 (alternative facts)」と言う言葉がいわゆるバズワードとなって拡散。既に本家ウィキペディア上には「代替的な事実」のページが開設され、SNS上にはハッシュタグ#AlternativeFactsも登場してさらにネット上を盛り上げています。

「代替的な事実」の危うさについて

今回は上記の「alternative fact」という言葉について、少し自分に引き寄せて考えてみました。
元々既存メディアを激しく敵視する陣営の方々は、自分たちの不人気を煽るようなメディア報道に対し、既存メディアは嘘ばかり垂れ流す悪で自分たちの真の姿を捻じ曲げている、我々こそが真実であるというイメージコントロールを狙って反論したのだと推察します(案外そんなに考えはなくて、悪口言われたからムキになった、くらいかもしれませんが)。
それ故に、発言者からしてみれば上記の「代替的な事実」は「虚偽」ではなくて「拡大解釈」、或いは「願望」と言い換えられるものかもしれません。

そしてこうした「事実」と「解釈(あるいは「願望」)」の混同はしばしば起こる。
人間には、自分の利害や希望に沿った方向に考えが歪められたり、対象の特徴に引きずられて他の特徴ついての評価が歪められたりする「認知バイアス」という現象が起こることが様々な心理学実験で確かめられていますが、この「認知バイアス」は、何もパワーエリート特有のものではなく地位や肩書きに関わらず全ての人の認知機能に備わっているものです。
またこうしたバイアスによって歪められた事実・もしくは願望に基づいて下された判断を無批判に重ねていった場合、「大抵の場合失敗する」ということは歴史が証明しています。

どんな組織のリーダーでも、あるいはリーダーでなくても、自分の判断の根拠は「事実そのもの」なのか、「解釈」あるいは「願望」によって多少歪められた何かなのか、ということについては常に内省し注意を払うこと。実は人間は皆そのような危うさを内包しており、人間が下す判断もまた100%の事実に即して正確に下せるものではないということは、誰しも常に心に止めておく必要がありそうです。

そして流行の震源地でもある海の向こうの大統領の一挙手一投足も、しばらく目が離せませんね。

Kyohei Mitani

筑波大学 社会学類卒業。大学在学時から現在まで17年以上、クリニックの開業支援や、経営コンサルティングを行う。2016年より Jump Start に正式ジョイン。

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