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改正医療法の施行〜医療機関のウェブサイトが「広告」扱いに。

2018.6.1

カテゴリ:Medical/Social 著者:三谷 恭平


【医療機関ウェブサイトが医療法上の「広告」扱いに】

かねてより懸案であった医療機関ウェブサイトへの広告規制の適用について、本日(平成30年6月1日)からの施行が予定されています。

これまで、医療機関のウェブサイトはあくまで受診する患者への「情報提供」の一環であり、医療法で規制の対象となる「広告」とは違うものとされていました。

ところが、美容医療を主な対象とした消費者トラブルの相談件数の増加を踏まえて医療機関のウェブサイトに対する規制が検討され、平成29年6月14日付け 「医療法等の一部を改正する法律 」(平成29年法律第57号)によって、医療に関する広告規制の見直しが行われる事が決定。その後数度の検討会を経て、平成30年5月に施行内容が明らかになりました。

施行日時点では施行後の運用について不明瞭な点もあり、今後の動向を注視して行く必要がありますが、まずは今回改正と医療機関ウェブサイトへの影響について、簡単に整理してみたいと思います。
※本稿執筆時点での情報に基づいた内容ですので、今後の運用状況によって本稿情報のアップデートを行う可能性があります。ご了承ください


【今回改正で何が変わった?】

医療法の広告規制の対象外だった医療機関ウェブサイトが「広告」の扱いに。

→看板などと同様、医療法の広告規制を受け、是正命令や罰則等の対象になりました。

【今まで医療機関のホームページは何だったの?】

医療機関のウェブサイトは“広報・情報提供”という扱いでした

→医療法改正前の医療機関のウェブサイトは、患者に対する「広報」や「情報提供」という扱いをされていました。
そのため医療法とは別個に「医療機関ホームページガイドライン」というガイドラインが策定されていましたが、広告と比較して自由な記載が許されていました。

【医療法における「広告」の定義とは?】

医療法における「広告」の定義を見返してみます。医療法においては、次の①、及び②のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するものとされています。

    ① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
    ② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院もしくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

なお、①でいう「誘引性」についての例を挙げると

新聞記事は、特定の病院等を推薦している内容であったとしても、①でいう「誘引性」の要件を満たさないものとして取り扱う。
病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当する。

となっています。

【医療法で禁止されている「広告」とは?】

医療法では、下記に該当する広告を禁止し、罰則の対象としています。

(1)広告不可能事項の広告
「死亡率・術後生存率」「未承認医薬品による治療内容」など

(2)虚偽広告
「"絶対安全"などの文章」「加工・修正した術前術後写真」「"◯%の満足度"など根拠のないデータ」など

(3)比較優良広告
「"日本一""No1""最高"などの最上級の表現や優秀性について誤認を与える表現」「著名人との関連性を強調する表現」など

(4)誇大広告
「知事の許可を取得した病院です!」等、当然の事実を特別なことであるかのように不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告
「◯◯学会認定医」(活動実態のない団体による認定」
「◯◯手術は効果が高く(低く)、オススメです(お勧めしません)」や「◯◯の症状のある方は今すぐ受診を!」等、科学的根拠が乏しい情報であるにもかかわらず特定の症状や処置に対する有効性/リスクを強調すること
撮影条件や被写体の状態を変えた術前術後の写真」など

(5)患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
「治療内容や効果についての、患者の主観的な体験談」は、個々の患者の状態等により感想は異なるため、医療広告としては認められない

(6)治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告
いわゆる「ビフォーアフター写真」については、個々の患者の状態等により治療の結果は異なるものであるから、医療広告としては認められない
※ただし、詳細説明(後述)を付した場合は例外とし、限定解除の対象となります。

(7)公序良俗に反する内容の広告
わいせつ若しくは残虐な図画や映像、差別を助長する表現など

(8)その他
品位を損ねる内容の広告(「費用を強調した広告」「医療内容とは直接関係のない事項による誘引」「ふざけたもの、ドタバタ的な表現による広告」)
他法令に抵触する内容の広告(「特定の医薬品の商品名」等→医薬品医療機器等法の広告規制対象)など

【「広告可能な事項」以外は、ウェブサイト上で一切広告できないの?】

→いいえ。今回改正でもっとも議論のあった部分ですが、患者自ら求めて入手する情報については、「他の広告媒体と同様に広告可能事項を限定することとした場合、詳細な診療内容など、患者等が求める情報の円滑な提供が妨げられるおそれがあることから、一定の条件の下に広告可能事項の限定を解除する」こととなりました。

ここで言われる、「一定の条件の下に広告可能事項の限定を解除する」の「一定の条件」とはどういうことなのか?次回、限定解除の条件を整理しつつ、個別の事例に即して弊社の考える対応をまとめてみたいと思います。

後編:「改正医療法の施行〜個別事例についての考え方」

Kyohei Mitani

筑波大学 社会学類卒業。大学在学時から現在まで17年以上、クリニックの開業支援や、経営コンサルティングを行う。2016年より Jump Start に正式ジョイン。

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